六ヶ所再処理工場は、誰のお金でこんな大きい危険なものが動くことになっているのかということについて解説します。
これは建設当初の試算です。再処理工場を作りました。建設40年操業してごみの処理まで含めて大体11兆円で済むよという話でした。これを経産省の若手の職員たちが、「いやあ、六ヶ所再処理工場は金がかかりすぎるんだからと雑誌に売り込んで、やめさせよう」としてやったんです。この時使ったのがこの2004年の「バックエンド事業全般にわたるコスト構造」です。これがもうちょっと前だったらね。これが内部資料で出た時にマスコミがスクープをやって、こんなにカネかかる、11兆円もお金がかかるなんてバカバカしい。トータルで高レベルの処分まで入れると19兆円もかかるんだよ、と。この時は本当にみんな止めるつもりでいました。
所が、次の表を見てもなお、再処理等の事業の進展を止められなかった。
ところが、これを公表された原子力委員会の委員長近藤俊介氏はこれを見て、「私は、将来日本が高速増殖炉をするんだったらば、という条件はあるけども、迷うことなくこっち(カネがかかる方)を選びます」と言ったのです。5人しかいない委員中で委員長がうんと言ったので、結局ほかの人も「そうですね」と言って議論が終わったんです。
この費用を、国も電力会社も負担できないので、結果的に国民負担にしたのだが、その辺りの話しは後でお話しします。
(追記:近藤俊介氏は、再三高速増殖炉の旗振り役であった。以前、六ヶ所再処理工場のアクティブ試験が開始されることになった際にも、「核燃サイクルの重要課題は高速増殖炉であり、再処理工場の稼働はその一つの過程に過ぎない」という旨をある原子力推進の雑誌のインタビューで応えていたことがあった。
もっとも、この頃の発言は、高速増殖炉・原型炉「もんじゅ」が存在していた故の発言である。今はその実験が中止となったし、ずっと将来(今から50~60年よりは先でしょう)にかすかにその種が残るかどうかであり、むしろ直接処分を選択すべきではないのだろうか。
かつては日本原燃が手掛けるはずだった六ヶ所再処理工場が経営危機に陥る可能性を考慮して、使用済燃料再処理機構を立ち上げ、近藤俊介氏はそこの運営委員に納まっている。そして、高レベル放射性廃棄物の最終処分場を作る側の原子力発電環境整備機構(ニューモ)の理事長も兼ねている。つまり、再処理事業を進める側と、その核のゴミの最終の後片付けを担う立場に居続けている。
結局は、かつて原子力開発を進める側にいた彼らが、今もその体制を維持し続けようと躍起になっているのが実態である。
だが、1986年のチェルノブイリ原発事故と2011年の東京電力・福島原発事故で原子力工学を学ぶ後継者がどんどん減り、原子力メーカーに優秀な人材が集まらない状況に陥っている。これは深刻な問題である。
原子力関連の仕事は被ばくを伴うので、仮に本人が就学を希望しても家族が反対して、被ばくするような現場に就労する人がどんどん減っているのが実態のようである。
このような状況を考えると、高速増殖炉の研究開発に関わる人材が少なくなるだけでなく、万が一の原子力施設の事故発生に際し、その収束に当たる人々の能力が問われる事態になっているのが実態であろう。
今年は新型コロナの関連で、数兆円とか十兆円のお金が駆け回っているが、このバックエンド費用を計算した時は、六ヶ所再処理工場の40年間運転とか、高レベル放射性廃棄物の最終処分等を含めて約19兆円という想定であった。そのレベルで考えると、この費用が安いと思うかもしれないが、何かの事故が起きたら、その対策に相当な費用が掛かることは、東京電力・福島原発事故で国民皆が周知の事実である。
この約19兆円が、2倍、3倍、4倍、5倍と増加する事態にならないようにするには、先ずは六ヶ所再処理工場の操業をストップさせることに尽きるだう。)
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