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これは私の最初の投稿です


201017アオモリスタディツアー 山田清彦によるガイド


パワーポイントでの学習会のテープ起こしとなります。長文なので、ごめんなさい。

参考資料等を添付したものもありますので、、必要な方はお問い合わせください。



<2020年10月16日(前日)の事前学習>

 今まで六ヶ所再処理工場の問題でいろいろ取り組んできましたが、やっぱり完工延期というのは非常に意味があります。完工が2022年に延びたということで、それを中心にお話ししていきたいと思います。

高速増殖炉とセットだった六ヶ所再処理工場


 六ヶ所再処理工場は、日本の核燃料サイクルの中心施設ということでプルトニウム利用の計画から始まっています。これが昔の高速増殖炉です。ここを中心とした核燃サイクルをめざしたのです。当時は、ウラン資源がたった60年分くらいしか埋蔵量がないということで、それを一旦海外から輸入し、原発で燃やして使い終わった後に再処理する。再処理した後の燃料を高速増殖炉というところで使えば、ウラン資源を50倍有効に使えるので、3000年先までエネルギーに困らないという夢のお話がありました。高速増殖炉のもんじゅは原型炉で、ちゃんとした商業炉は世界的にも出来ていないのですが、一応それが狙いで日本のエネルギー政策はいつも高速増殖炉を実現するという話になります。ところが今はもんじゅが廃炉となり、この夢物語がなくなって、ここから上が今皆さんが関心のある核燃料サイクルということで、明日日本原燃のPRセンターに行っても、この下はもう書いていません


 ただ、根っこにはこの計画があって、今から50年先だったらば出来るんじゃないですかということが、原子力推進側と自民党などがまとめているエネルギー基本計画に出てきます。

「プルトニウムを取り出す」とは

 プルトニウムと言うとみなさん長崎型原爆の材料だと思うかもしれません。だが、原子力発電所で4年位運転しているうちに、初めはウラン235を燃やしているのですが、ウラン238が少しずつ燃えてプルトニウムに変わって発電に寄与していますよ、というのが原子力推進側の話です。「3年から4年して取り出した使用済核燃料の中にはプルトニウムとウランがそれなりに残っている」という言い方をして、「これを取り出すんです」というのが彼らの主張です。ウラン燃料は天然ウランを濃縮して作ります。ウラン燃料の材料となるウラン235は、もともとの天然ウランには0.7%しかないわけです。これを濃縮して3%~5%に変えて、それを金属ウランに再転換し、ペレットにしてから、原発に挿入して運転していきます。この中でさっき言ったような変化をして、最終的には使用済核燃料という形で出てきます。その中にはプルトニウムが約1%、回収ウランが約95%(燃えやすいウラン235が約1%、燃えにくいウラン238が約94%)、核のゴミが約4%が含まれます。

「MOX燃料」とは。そして「MOX燃料」を燃やした後は

 日本では再処理工場で抽出したプルトニウムを単体で取り出せないので、同量の回収ウランと混ぜた濃度約50%のMOX燃料として取り出します。これを、これから作るMOX燃料加工工場で金属ウランと混ぜて、プルトニウムを4~9%の比率に加工したものが原子力発電所で使うMOX燃料です。これをプルサーマルと呼びますが、日本でそれをやっている原発は4か所しかないそうですが、そういうものに使うんですよと言っています。もともとはこのMOX燃料の濃いものを高速増殖炉に入れて、こっちの回収ウランとかウラン濃縮工場に貯まっているものを突っ込んで燃やしていくと、それもプルトニウムに変わるということで、効率がいいと言われたのです。しかし今はそれが出来ないので、このMOX燃料の使い方が問題になっています。

 つい最近まで、使用済みMOX燃料の管理期間は数十年と言われていましたが、最近100年とか300年とかいう話も出てきました。それで、とても使用済みMOX燃料は普通の原発で再処理は出来ませんよ、というのが、もう経済界も原子力推進側も認めるような話になっています。実はこのMOX燃料とウラン燃料の値段の違いは、ウラン燃料が全体で1億円だとすると、MOX燃料の方は30億円かかるというとんでもないお金がかかるということが分かってきました。これは非効率なわけですが、六ヶ所再処理工場から出て来るものを燃やさないといかん、ということで原子力推進側が進めようとしているのが今の現状です。

 これもウラン資源の有効利用の一つで、普通の原発の場合はウランの有効利用率として0.55%しか使わないんだけれども、高速増殖炉は約60%有効に使う。プルサーマルの場合は、0.75%で、普通の原発の場合よりも0.25%増えますよ、ということです。

 しかしプルサーマルの場合は1回だけのリサイクルということで、何回もリサイクルできるわけじゃありません。そういうことなので、とりあえず、普通の原発とプルサーマルの選択肢しかないよというのが現状です。だから再処理をする意義はないのですが、プルサーマルをするには再処理しなきゃいけないので、まあ「使える資源を取り出す」という言葉になっているというわけです。

1956年にはもうあった「再処理」構想

 この核燃サイクルと言うのはいつ頃進められたのかというと、1956年9月6日にもう決まってしまいました。今から65年ぐらい前ですね。この時に「燃料の再処理」という言葉がもう出ています。それから増殖炉、または動力炉ということで、この辺で将来、高速増殖炉をやるんですよという話です。青森県に持ち込まれたのはいつかというと、鎌田慧さんに言わせれば、13年後にはもう青森県に「むつ小川原大規模工業開発調査報告書」というのが出ていて、その中には「濃縮・成型加工・再処理」という形でもう出てますよ、ということです。でもこの時はまだ民間再処理の道はなかったので、この時点でやろうという話にはならなかったと思いますが、計画としてはそういう大きな計画があったのです。

全国の離島が候補地になった挙句

 各地の原子力開発計画は当然ありまして、69年の「新全総」で、むつ小川原地域は超大型の工業基地候補となりました。これ以外に私が聞いている話だと、沖縄の西表島だとか、ああいうところで再処理工場の話があったのですが、「内地の核のゴミはいらん」ということで断られています。それから徳之島にもこういう計画もありました。今、北海道が話題になっていますが、1975年には奥尻島で再処理工場の建設プランもありました。その後77年にむつ小川原開発は、第二次基本計画に縮小されていくわけですが、この時点で、奥尻町議会が1983年の7月に調査委員会設置条例を設定します。ところが動きがないので奥尻町が83年12月に東京の電事連に行って、いやあ全然動きがないんですけどどうなってる?と聞いたときに、電事連の方から北海道知事が反対しているからお宅には行かないだろうと言うわけです。もう一つの自治体で首長が賛成しつつあるということで、そちらに行くんじゃないかという言葉が、この12月の現地調査で言われました。

 1984年1月に地元の新聞、東奥日報に「核燃サイクル三施設が来るのかもしれない」というニュースが出て、4月に立地要請がされたという経過です。実はこの以前に、北村知事とか山内副知事がむつ小川原開発に失敗して土地が余っているのでどうにかならないかと泣きついて、電気事業連合会側から再処理工場いかがでしょうという話があったが、再処理は高レベル放射性廃棄物が出るから容認できないと断った。どの後、北村知事からウラン濃縮があるんだったらいいよということで、3点セットに83年以前にも合意をしていたという裏話があります。

 ところが青森県民のほとんどはそういう情報は後からしか教えてもらっていませんので、1984年4月に電事連から青森県の下北郡に核燃施設の立地要請があり、もう1年後には受け入れを決めてしまったわけです。この間反対運動はあるのですが、もうほとんどこの状態で決まってしまいました。もし奥尻に先に決まってて再処理工場で来ていれば、その後大規模な津波がありましたから、今頃この辺は再処理工場の放射能で、「東北より北へは行かれませんね、強い放射能が残ってます」という風になっていたかもしれないね、というのが、私の感じ方です。

日米原子力協定の現状と期待

 85年4月9日に受入れが決まった後に日米原子力協定が発効したのですが、これまでの東海村の再処理工場の方は個別的同意ということで、再処理するたびに同意を必要としていたんだけれども、この原子力協定では「包括的同意」ということで一括的に決めることができるということになり、準備はしていました。ところが30年経っても未だに再処理工場が動かないというとんでもない話になっているわけです。いずれにせよ今現在、日米原子力協定は自動的に延長しているだけでして、一方がお断りすれば半年後には協定がなくなるのです。私は今、例えばトランプが大変支持が落ちているそうなんで、トランプが負ければ、前の民主党時代の原子力問題のブレーンがたくさんアメリカの国会に戻ってくれば、あっという間に再処理はダメですよ、日本の再処理させません、しないでください、余剰プルトニウムの解消が出来ないんだからやめなさい、と言うのかもしれないとすごく期待しているのです。というのはアメリカに一回行った時に、その辺が一番問題になっていて、以前トランプが勝った時に、原子力問題にかかわっていた閣僚が全部クビになりました。そこで、原子力情報室が彼らを日本に呼んで会議を開いたことがありましたが、「これからアメリカの原子力情勢はどうなるんですか」と尋ねると、皆さん「分からない、全部トランプが考えているから俺たち関係ない」という話でしたから、彼らがもし戻れば、そうなる可能性が大きいと思っています。

「余剰プルトニウム」を持つことを意に介さない推進派

 もう一つ、18年の7月31日に、原子力委員会はアメリカの意向を受けて「余剰プルトニウムを持ちません」と言ったのですが、これにも裏があって、そのあと「ふげん」のゴミを海外に出すときに、「再処理してまたプルトニウム出るじゃないですか」と言う指摘に対して、原子力委員会がNOと言いませんでした。日本は研究しているんだから、世界も認めてくれるだろうということを議会の中で議員の質問に対して答えていたのです。それほど制約を持っていない人たちだなあという風に思っています。これはちょっと残念なところです。

廃棄物運搬船の話

 高レベル放射性廃棄物一時貯蔵施設は、核燃3点セットとは別で、後から追加された4点目の施設です。日本の電力会社が使用済燃料の再処理を英仏両国に依頼して、再処理した後に出る高レベル放射性廃棄物が日本に返還されることになっています。高レベル放射性廃棄物が海外から戻って来るときには、パシフィックシリーズの船で帰ってきています。それから低レベル放射性廃棄物の輸送船は、青森が栄えるということで、青栄丸という名前になっているし、それから使用済み燃料の輸送船は六ヶ所が栄える(六永丸)というネーミングになっていて、これは今ほとんど動いていません。青栄丸は時々ドラム缶を運んできています。

全国各地の使用済燃料貯蔵量

 あと、使用済燃料の貯蔵状況と言うことで、私が作ったのは2019年9月末時点ですので、もうちょっとすると、2020年の9月末時点が発表できると思いますが、この時点で使用済燃料の貯蔵が約1万6千トン。で六ヶ所に約三千トンくらいありますから、この時点で約1万9千トンあります。他の方は1万8千トンという言い方をしますけど、それは2018年くらいの資料なので、新しいものを追加していくともう少し増えていきます。なにしろ動いている原発が少ないので、そんなに貯蔵量が多くなっているわけじゃありませんし、全体で今占めている割合が、74.7%いわゆる原子炉の方に残っていると。梶山さんなんかは今いろいろ発表する時に、経産大臣は8割ぐらいと言っているけれども、まだ8割は行っていませんね。そこはちゃんと慎重に我々も調べておかなければいけないところだと思っています。

22年に完工できるのか?

 24回目の再処理工場の工期延期発表が8月21日にありました。問題は、その後嘘っぽい計画が出されていることです。この時2021年上期完工にこだわった日本原燃に対して原子力規制委員会が「野心的」と言ったのですが、じゃあ1年延びた2022年ならいいんですか、という話になります。この表を見てください。私は大変ビックリしました。7月に許可が出ました。今10月ですからこれから設計工事の方法の認可申請書が出てきます。その時に1年ぐらいかけて審査が行われると言っているので、安全対策工事に入るまでの審査がすごく長いはずなんですね。彼らはこういう形でとりあえず出していきます。4分の1ずつ分割して出していって、そのたびに3カ月ごとに許可をいただきたい、それで安全対策を進めていきますよ、ということで、1年後には全部許可が出るよ、それで工事が始まります。日本原燃は、工事が始まれば22年ごろには終わってしまうという、非常に早い工程の図を出してきています。それでびっくりするのは、安全対策工事を終わって22年の上期竣工とあるのですが、この時に何をしているかと言うと、実は地元と安全協定を結びます。六ヶ所村、青森県、隣接の自治体と結ぶのです。そしてここに入って初めて溶液、廃液処理運転開始をして、2023年の春なのかちょっとわかりませんが、せん断開始、つまり再処理はここから始まるんですよということになります。

溶液と廃液処理を半年で出来るのか

 だから2022年に完工と言っていながら、実は溶液と廃液処理--放射能を除去する作業--を半年くらいかけてやりますというのが彼らの本音なわけです。だから伝わってくるところの行程を見ていると、終わったように見えるけど、実はここが一番肝心なわけです。本来であれば、この作業を安全対策工事の前にやって、きれいにした段階で作業を始めてもらうのだったら問題はないのです。ところが、配管総延長が約1300kmとか約1万を超える重要な機器が汚れている状態のままで、そういうものの点検は今までほとんどされていない段階ですので、外側の安全対策工事だけしていても、本当にきれいにする作業がここから始まるわけです。そんな状態の施設から放射能が出てきますよということになると、私どもとしては不安でたまらないということを、私は今日のデーリー東北の「こだま欄」に書きました。

7千億円のお金を突っ込んでも計画通りにはいかないのでは

 今、六ヶ所再処理工場では約6千人働いているそうなんですが、これから安全対策工事をすると約7千億円のお金がここに落ちます。お金を拾いに行ってもいいくらい出るわけですから、約6千人の工事じゃなくて実は安全対策工事に入れば、1日約8千人くらいが働くということで、あと約2千人ぐらいを雇い入れるという話になっています。これはもう正常な感覚じゃなくなって、少しでも仕事をしたい、少しでもお金をもらいたい人が一杯来ることになるのですが、よくよく考えると、この工事ってせいぜい1年か2年でやらなきゃいけないのです。再処理工場を作るだけの工事に、たった1年、2年関わっただけで後は仕事がないわけです。そんな状況のところに今六ヶ所村が置かれようとしていて、これは人集めも大変だし、審査する側だって大変でしょう。

 しかも、もう一つの問題は、ウラン濃縮工場と一時貯蔵施設とMOX加工工場の審査が始まります。ウラン濃縮工場はもう終わっていて、高レベルの一時貯蔵施設も合格しました。MOX工場は今、パブコメやっています。ですからほとんど合格しています。その結果、この再処理工場の設工認に加えてウラン濃縮工場とMOX加工工場を同時期に設工認申請予定ということになります。でも、それだけ多くの人が日本原燃にちゃんといるのでしょうか。再処理の方だけで6万ページ、ウラン濃縮工場も6万ページ、こっちもこっちも作れるという人がそんなに揃っているのか、それから規制委員会の審査の同じ時期に重複して出来るものなのか。そして、それが終わったら工事をしなければいけないので、沢山の人が要る。たったその1年、2年の間に人が沢山要る。それで、それが終われば仕事がないわけですから。そんなところの仕事に行く人がそんなにいるのでしょうか。こういう問題があるので、私はこの計画表は計画通りに行かないと思います。2022年どころか、2023年2024年になってもまだやっているとは思います。

無理やり動かそうとしている日本原燃

 ただ、向こうの姿勢としてはこういうことをやろうとしているし、これを決定したわけです。今年の7月16日のデーリー東北の新聞があるんですが、今まで安全対策工事でもなんでもそうだけど、例えば「朝8時から始まって夕方5時6時で終わりますよ」というのでは時間がかかるから、もう朝から晩までずうっと働く人を、2交代でも3交代でも突っこんでくれないかというのが事業者側の姿勢なんです。六ヶ所村内で働いている人の数は限られているので、いやそんなことを言ったって出来ないよということで断ってい居ますが、足りないなら他から連れて来るのではないでしょうか。そういうことをやってでも、無理やり動かそうとしています。

突貫工事がもたらしたプールの水漏れの教訓は?

 一つ前提としてお伝えしておく必要があると思いますが、使用済燃料の貯蔵プールが1000トンの使用済燃料を入れるプールを3つ作って、今再処理工場には1000トンプール3つが、ほとんど3000トン近く貯まっています。それで、この工事をやる時に、一つ目の貯蔵プールは大江工業と言うところが、日本中の原発の使用済燃料のプールを作った技術がありますから、それは成功しました。だが、2番目、3番目は大江工業も人がいないので、全国から溶接業者を集めてプールを作りました。集めた人たちをたった1日研修して、「はい、あなたは明日から使用済燃料貯蔵プールの施工管理者ですよ、施工業者ですよ」というお墨付きを与えて始めたのです。その結果、とりあえずプールが出来ましたが、貯蔵を始めて5年後くらいに2番目と3番目のプールから水漏れがして、調べたら不良工事がありましたね、ダメでしたねということで直したわけです。その結果とんでもない工事の手間がかかりました。今同じことが起きているように思います。おそらくこんな風に短期のうちにやろうとすると、3年、4年、5年後に、あっちからこっちから放射能が漏れてるみたいな形にならざるを得ないのではないでしょうか。だから、工期に間に合うかどうかということを気にして、余り急いで作れば、結果的に再処理工場そのものがダメになってしまう可能性が私は高いのではないかという気がしています。

パブコメへの応募件数が少ない

 もう一つ、今年の9月3日、むつの中間貯蔵施設の審査が終了したのでパブコメを実施しました。しかしパブコメ件数が確か60何件しか応募がありませんでした。再処理の方は750くらいあったのです。こちらは私が63件書きましたので、むつの方も、もしかして私が書いていたら120くらいになったのかもしれませんが、ほとんど応募がなかった。MOX工場も今パブコメをやってますが、書く人がいないとどんどん減ると思います。私は、今から200ページの審査書を見て、このツアーが終わってから書こうと思っていますが。

大間原発は町民はあてにしていない。規制委員会もさじを投げた状態。

 大間の原発は2026年に完工するはずでしたが、それを28年に延ばしました。しかし今から8年後ですから、8年先に果たしてこれが動くのか。これは町民から見るともうあてにならないということになっています。しかし、これが動かないと六ヶ所再処理工場を運転する意味がほとんどなくなります。他の原発でプルサーマルが進まない現状の中、大間原発は大体1.1トンくらいのプルトニウムを1年か2年くらいの間に使ってくれるということで、一番期待が大きいのです。

 ところが審査する側の規制委員会にしても、世界初のフルモックスなので、技術がないのです。原発の審査は出来るけど、フルモックスの原発は難しいと言って、殆ど匙を投げた状態です。だから大間の方が先に潰れてしまえば、六ヶ所再処理工場はやめるには非常に都合がいい状態になるわけです。私たちの運動からみれば、どっちでも、六ヶ所でもいいし、大間でもいいのですが、どっちかを止めればもう両方とも止まるよというところまで来ていて、彼らの方がつらい立場にあると思います。そういうことを考えながらツアーで現場を見ていただければと思います。

再処理工場の致命的欠陥は

世界で最後の湿式再処理工場

 六ヶ所再処理工場の致命的欠陥はいくつかありますけど、まず、世界で最後の湿式再処理工場ということがあります。六ヶ所再処理工場は、仮に成功しようが不成功であろうが、その技術はどこにも継承するところがありません。さっき規制委員会の審査が6年半かかったと言いましたが、規制委員会の人たちも6年半付き合ったけど、その湿式再処理工場の技術を次の再処理工場に反映できない。ここに関わっている技術者もこれで終わり。だからせいぜい40年ぐらいは付き合うかもしれないけど、その後のものはありません。

もともとはフランスの再処理工場をモデルに作られたのですが、技術の肝心な部分はフランスがまだブラックボックスを持っていて、日本に全部渡していませんので、なんかあった時にはフランスから来てもらわなきゃいけません。

膨大な施設群の管理

 再処理工場の見学に現地に行けばPRセンターにパネルがあって、「こういう形で進めますよ」という風に展示がされています。使用済燃料を受け入れて、貯蔵を始めて、せん断、ここで硝酸溶液で全部溶けて流れていく。ここへ行くまでの配管の長さがたったの約1300㎞です。それで、重要な機器が約1万ヶ所あるんですね。そういうものが沢山ある行程が、大体18くらいの建物の中に納まっていて、建物の壁厚は1mちょっとあります。だから戦闘機がぶつかっても大丈夫。天井の厚さも1mくらいということで、戦闘機が落ちて来ても大丈夫だけれども、大型航空機が落ちてきたら分かりません、と言う話です。

 いずれにしてもこういうものが収まっている中で、過去に425トンの使用済み燃料を再処理した実績があります。当時、ガラス固化工程が上手くいかないために、全行程が停まった経験があります。こうした実績があるのですが、それから10数年経ちました。配管など手入れはしているとは言っているのですが、放射能除去作業などは出来ていないそうです。というのは、配管の中にたまっている放射能を取り除いてしまいますと、そこから錆が始まります。錆が始まるとまた大変なので、結局、中にゴミを置いた方がまだ錆びないという、とんでもない矛盾の話ですけれども、そういう状況で今いるわけです。

経産省と規制庁で附合しない数字

 この前、7月21日に行われた省庁交渉に参加して、経産省と規制庁の職員に対して、使用済燃料を800トン処理した場合にプルトニウムはどれくらい出ますかと質問しました。規制庁の方は、資料によると7トン、モックス燃料にすると14トン。経産省の方の答は6.6トン。モックス燃料で13.2トンということでした。「なんで?これ食い違うじゃないですか」と言ったら、経産省の方は日本原燃からそう聞いたという話で、規制庁は審査書類に載ってますよというのです。じゃあ、800トン処理した場合のトリチウムの管理目標はいくらですか、と聞くと、経産省は今は15年保管後に再処理することになったので「9.7×10の15乗です」という数字なんですが、規制庁は1.8×10の16乗でこれの倍くらいです。福島にトリチウムがたまっている量はこれの10分の1くらいです。ですから、レベルで行けば経産省が10倍、規制庁が20倍くらいになるんですけど、こういう答えです。全然食い違っていて、同じところに座っているのに違うので、聴いている方が混乱しましたけれども、平気で言ってました。

 それで、このプルトニウムの6.6トンについて、先ほど県紙である東奥日報の記者に確認したのですが、東京在住の記者が根拠を聴きたいと思って日本原燃から聞いたりしましたが、どうもこの数字が明らかになっていないと言うのです。6.6トンも誰がしゃべったのかも分からない。ということで、公式的には私たちは7トンと言うことで考えていく必要があると思いますが、そんなあやふやな状況です。

六ヶ所の稼働期間は40年?

 一番肝心な質問として、操業40年という話を私たちはどうしても信じ込んでいて、年間800トンで40年稼働するので、3万2千トン再処理するのが再処理工場だという言い方をするのですが、最近疑問に思って、「操業40年ですか」と聞くと、「いやそうでもないですよ」と言うのです。「途中で定期検査などをするので、40年で終わるということでもありません」ということを日本原燃の人が言うのです。ちょっと私たちの計算の仕方が違うのかもしれなくて、もしかすると40年を超えても動かす気でいるのかなと思うのです。そうすると、例えば50年とかを考えると、むつの使用済燃料は受け入れから50年したらどこかに持っていかなければなりません。それで、リサイクル貯蔵の人はいつも「六ヶ所に持っていく」と言うのです。それに対して「六ヶ所は40年しか動いていないんだから、その時は持っていくところないじゃないですか」とこちらから言うと、「いやあ、その時は発生源の電力会社に戻します」と言うのです。しかし、もしかしたら再処理工場が50年後も稼働している可能性が出てきたかなあと言う気がして、ちょっと不安なところです。これについては、これから公開質問などで確認していきたいと思います。

再処理して出て来る核のゴミを、ごまかされないように申請書から拾って表にした

 再処理して出て来る核のゴミはどんなものでどの程度の量か、ということで書いています。プルトニウムの方は、さっき言った量ですが、核のゴミはこんなに出ますよ、ガラス固化体だったら1000本ですよ、ドラム缶なら950本ですよ、という形で出ています。それで、低レベル放射線廃棄物は置くところありますが、その他のもののほとんどは置くところが決まっていません。どこに行けばいいのか。ものによっては―普通、ドラム缶と言うと200ℓなんですが―1000ℓドラム缶もあります。こういうところが全く分からなくて、TRU廃棄物とか低レベル廃棄物以外のものは、実はもっと放射線量の高いものがあって、高レベルと同等に埋めなければならないものもあります。この表は、ただ「ガラス固化体で再処理すれば、核のゴミが減りますよ」というのが彼ら原子力推進側の普通の言い方なのですが、そういうものに対して、実際そうじゃないよということを、こういう申請書から私たちが拾っていかないと、ごまかされてしまうということで作った資料です。

事故は本当に大丈夫なのか

 他の国では再処理工場全体で事故を起こしているのですが、恥ずかしいことに、プールの漏水は六ヶ所村でしか起きていません。他の国では起きていない。原子力の先進地では起きていないことが、六ヶ所村では平気で起きています。ガラス固化も六ヶ所村ではたくさん失敗しています。この辺は技術力がないということを改めて認識する必要があります。とりあえず2年半年ほどかけて425トンを試験的に再処理して問題がないということになりましたが、これから年間800トン再処理しますよとなった時に、他の国で起きていることが、あるいは東海再処理で起きたような事故が起きるかもしれません。それを私たちは再処理工場の操業以降、時間の経過と同時に事故発生を目の当たりにすることになると思いますので、そうならないようにしなければいけないと思います。

 ドイツでは地球の面積の4分の1くらいのところに人が住めなくなるよという研究もおこなわれて、再処理やめましたよ、ということです。広瀬さんが書いた本の中では、東海再処理工場も危険だよと指摘がされています。皆さん六ヶ所再処理工場に関心が高いようですが、東海村もちゃんと注目しましょうねということになっています。これを見ると爆発の恐れというのがありますね。こんなことをしてると、日本とアジア全土が六ヶ所と東海で、この辺全体がなくなるよ、と言う話です。後で詳しく見ていただきたいと思います。

高木仁三郎さんの想定図

 それから、高レベル放射性廃液が100立方メートル溜った時にその1%が漏れた時ということで―現在は211m3たまっていますから、2倍くらいの量となっています―その時の100立米の時の1%ということで、高木さんが想定したのがこの輪です(高木仁三郎氏の図)

 半数死亡が六ヶ所中心で、周りの八戸近辺は100ミリシーベルトです。この時は1か月間ここにとどまることが条件です。名古屋でも1ミリシーベルトぐらい被曝します。子どもには被曝の影響が大きいので、乳幼児、妊婦も退避。札幌から仙台までで10ミリシーベルトに達するので、逃げなければいけませんという図です。

 これだけ話をすると、皆さん青森県外からおいでなので、「青森の人は大変だねえ」と言う話になるので、私が無理やりこういう図、「東京だって大変じゃないか」という図を作りました。東海村には今高レベル放射性廃液が340立方メートルありますから、六ヶ所村よりははるかに影響が大きいのです。あそこで同じようなことがあったら、東京はしばらく人が住むところじゃありません。福島の東京電力・第一原発事故で、今でも東京にホットスポットがあるようなので、そういうことから考えると決して無縁な話じゃありません。

 但し、東海と六ヶ所の再処理工場が両方とも蒸発・乾固して爆発すれば、ほとんど東日本は、北海道も含めて住める場所がなくなっちゃうということです。高レベルの事故が起きれば日本壊滅ということでありまして、そういう怖いところにわざわざお出でいただきましてありがとうございます(笑)

 明日無事ツアーが終わるように祈っておりますが、こればっかりは予測が出来ませんので。

空振りに終わったスクープ

 次に、再処理工場と言うのは誰のお金でこんな大きい危険なものが動くことになっているのか、ということで、建設当初の試算です。再処理工場を作りました。建設40年操業してごみの処理まで含めて大体11兆円で済むよという話でした。これを経産省の若手の職員たちが、「いやあ、六ヶ所再処理工場は金がかかりすぎるんだからと雑誌に売り込んで、やめさせよう」としてやったんです。この時使ったのがこの2004年の「バックエンド事業全般にわたるコスト構造」です。これがもうちょっと前だったらね。これが内部資料で出た時にマスコミがスクープをやって、こんなにカネかかる、11兆円もカネかかるなんてバカバカしい、トータルで高レベルの処分まで入れると19兆円もかかるんだよ、と。

 この時は本当にみんな止めるつもりでいました。ところが、これを公表された原子力委員会の委員長近藤俊介氏はこれを見て、「私は、将来日本が高速増殖炉をするんだったらば、という条件はあるけども、迷うことなくこっち(カネがかかる方)を選びます」と言ったのです。5人しかいない委員中で委員長がうんと言ったので、結局ほかの人も「そうですね」と言って議論が終わったんです。

誰のお金でこんな危険なものが動くのか

 議論が終わって、じゃあ、このお金誰が払うの?と言った時に、電力会社の方も、こんなお金出せません、国も出しません。それでいろいろ考えた結果、名案が浮かんだ。「国民負担」にしました。この頃から皆さんが払うように変わりました。10数年前から電気料金の中で明細書に載らない料金がかすめ取られていることをほとんどの人が知らないでいらっしゃる。大変幸せな人生を送っているわけです。知らないから。

 国民からこのお金を取るようになって以降、今は再処理工場、ウラン濃縮工場、低レベル貯蔵施設合わせて最初は1兆円ぐらいの産業だったのに、今はもう再処理だけでほぼ4倍になりました。この金額でもまだ足りませんからもっともっと下さいということで、再処理だけで今13.94兆円です。じゃあ、MOXはいくらですか。MOXは2.34兆円です。あれ?さっきもっと少なかったよね、という話なんですが、こういう形で行くと、もう知らないうちに16兆円くらいになるわけです。これが総事業費だから。

費用を電気料金に加算する制度をやめさせなければ

 小出さんと言う京都大学の先生をしていた人が、こういう表を見る時に、これは将来のことを考えると50兆円とか100兆円かかるのを、私たちは反対側としては考えなきゃいけないんだと。これで終わるはずがない。事故が起きた時の対策も含めるともっとかかるんだよ、と言う話をしていました。確かにどんどんお金が出ている状態を変えるためには、まず電気料金に加算する制度自体をやめさせるということを私たちが積極的に求めなきゃいけないんだけど、出来ていません。

 2009年に私が省庁交渉した時に聞いた話ですが、1キロワット/hあたりの負担金が、こういう形で明細されました。

 これが最近聞くとさらに桁が小さく発表されているようです。この時でもう過去に原子力開発をして使った分、平成16年までの15年間とそれ以降の分、最後は2369年まで納めるということで集めているわけです。

再処理費用も電気料金から

 電力料金明細書を見ると、再処理費用は載ってきません。最近載っているのは、自然環境にやさしい電気のエネルギーだとかで、そういうのは載ってきますがここは隠しているのです。ということで、集めたお金を日本原燃に毎年3000億円くらいずつこれまで払って来たのですが、今安全対策工事でかかる費用7000億円を日本原燃に投下するというのです。今まで3000億円でもびっくりしていたのに、7000億円もそのために投下するのが皆さんのお金でなされるのです。皆さんが「そのお金返してよ」と訴訟を起こさない限りは、この制度は延々と続くのです。

 今、皆さんは自然環境にやさしい電気とか、明日六ヶ所村に行くと風力発電所があったり太陽光発電所があったり、「いやあ私は環境に優しい電力会社と契約してるから、再処理等のお金払っていない」と思いたいんでしょうけれど、実は電力料金を払う段階で、例えば自宅に太陽光パネルやっている人もそうなんですが、電力会社と契約していると、送電線の費用負担がかかるので、それがこの費用の基になっているので逃げられないのです。

 沖縄は原発がないので、初めから入っていないんですが、他は全部、沖縄県民以外はすべて払っているし事業所も払っているのです。私の知り合いが八戸で太陽光パネルをやって、大間で風力発電をやって、ついこの間、佐井村で発電所を作って佐井に電気を送るということをやっていましたので、風力発電で電気を作っているんだから「再処理費用の金払ってるんですかあ?」と聞いたら、「電力会社と契約しているから払わざるを得ないんだよ、山田君」って言われて、結局逃げられないようになってますね。

冷却機能の喪失による「蒸発乾固」が一番こわい

 次は六ヶ所の重大事故の過酷評価を消しちゃっていいのか、と言う話です。さっきの高木さんが作った図よりももうちょっと小さいやつでイメージを考えてほしいんですが、結局3.11前の規制基準で審査がされた段階の時にほとんど対象にならなかった重大事故対策、例えば水があふれた場合、不法侵入、化学薬品の漏えいに対する考慮、それからそれぞれの地震とかに対しても、今までよりは厳しいというのが新規制基準です。重大事故対策は前回なかったので、新たにどんなものがあるのかとなると、これは自然事象の方で13事象ありますが、重大事故等の対象事象ということで1から7ということになっています。この中で一番怖いのは何かというと、冷却機能の喪失による蒸発・乾固です。

 再処理して出てきた放射性高レベル廃液を普段は電気で無理やり冷却しています。廃液を貯蔵する貯槽の2本の管を通して、その中に水を通して循環して、温度が60度以上にならないようにするということです。それが失敗した場合には、いきなりどーんと上がっていくのを蒸発・乾固という現象として捉えるのです。それ以外の方にも順番はついていますが、実は彼らはこれが一番怖いわけです。原発で「臨界」とか言いますが、こういうものよりはこれが一番怖いということで、これを一番トップに挙げて評価しています。

現場作業員が修復に当たる際の最大放射線量は250ミリシーベルト

 蒸発乾固の事象について様々なことを一応検討していますが、現場作業員が修復に当たる際の最大放射線量は250ミリシーベルトを超えないということになっています。福島の原発事故の時に、なんか間違って作業員が水溜に足を突っ込んで、270ミリシーベルトの被曝をしたことがあるのですが、この福島の原発事故が起きて以降、世界基準で実は修復作業の方は1000ミリシーベルト迄被曝するということをしても拡大の防止を防ぐんだということになりましたが、日本では250ミリシーベルトが最高です。通常では原子力施設の作業員は5年間で100ミリシーベルト。一番どうしても被曝しなければいけないということがあったよと言う時でも最大は50ミリシーベルト。普段は年間20と言う風になっているのですが、六ヶ所再処理工場で万一の事故があった時には250ミリシーベルトまでの被ばくが許容されることになりました。そのために社員から誓約書をすでに貰っているというのは、私が交渉の過程で聞いていますので、そういう覚悟のある人がいるんだな、ということを頭の中に入れておいてください。

 これが蒸発・乾固の図です。高レベル放射性廃液の中に配管が2本入っていて、常時水が回って、全体の温度を60度以内にするということです。一本が機能喪失しても、一本で維持しますよということなのですが、これが仮に停電で動かなくなると60度の温度がどんどん上がっていきます。冷却が出来ないから上がっていきます。その時には外から水を入れて冷やします。この建物は普段は人が入れないセルと言う構造で、説明書を見ると自動的に出来るとなっていますが、おそらく人が行って作業をするんでしょうね。

 そこから出た放射能が周りに出ようとするときには一応、可搬型廃棄フィルターもしくはヘパフィルターを通して放射能を減衰して、最後は主排気塔から出ていくのですが、150mの排気塔から出る時に、そこにこういう放水砲で水をかけて、放射能を叩き落すのだそうです。出来るんでしょうか。色がついていない放射能をいったいどうやって叩き落すんでしょう。黒澤明の「夢」という映画観た方いますか、あの中で色のついた放射能を発見してよかったがこんなに来たらどうしようもないって言ってましたね。こちらは色がついていませんが出来るんでしょうか。ま、こういう状況なんですよということです。

 細かい話はともかくとして、この図を見ていただいて、一番怖いのはここなんだと理解してください。ルテニウムというのが発生して、これがたくさん出るので困りますよ、ということになっていたのですが、規制委員会の方で「ここに乾固って書いてるんだけど、乾固って何ですか」という話になった時に、「乾固よりもこっちが大事でしょう」と言う話をして、一生懸命乾固を隠していたのです。

 その後、こんな図を出していますが、ここで注目すべきは、ここが蒸発・乾固で、セルから、建物から放射能が出て、外部被ばく迄、内部被ばくもしますよと。この時どのくらいなの、ということで。外部被ばく1週間。さっき高木さん1か月と言ってたので4分の1ということ。ガンマ線等による外部被曝。で、ここで図を出してきてここで見なければいけないのはここですね。高レベル濃縮廃液がさっき六ヶ所に211㎥あると言いました。これに事故が起きたときに、5キロの範囲のところでこういう風に21ミリシーベルト/hくらいです。30キロは三沢なのでここは2ミリシーベルトです。米軍基地がこの辺にありますから。あちらでそういう表を出してきたので、悔しいから対応した地図をわざわざ作りました。こういう形で広がっていきますよということです。

「嘘」が混じっている審査結果

 ただ、高木さんの評価とあまりに違いすぎるので、本当にこれで正しいのかなあと私は疑問に思っています。おそらくは嘘なんだろうと思います。蒸発・乾固した時、日本原燃は最初「セルの中は水につけてしまうので大丈夫」と言ってたのに、最後になって、「臨界が起きますよ、爆発が起きますよ、貯槽損傷も起きますよ」と言いだしたんです。日本原燃の方が言い出したんです。それで、この図を見てください。

 ここが200度です。40度の温度差があってずうっと行ってここが1600度です。貯槽の容器はこっちです。乾固したものは貯槽の限界値を超えてしまうんです。ステンレスの容器でだいたい1500度から1600度で溶けますから。これを出してくるということは、溶けてしまいますよ、と言ってるわけです。溶けて大変なことになるんだよ、ということを言ってわざわざこういう図を出してきたのに、その時にセル内に作業員が入って、1時間30ミリシーベルトと言うのですから。ま、8時間くらい作業すれば240ミリシーベルトになりますが。1600度を超えるという図がたった1回の説明で出て、それ以降は「そんなことはありません」という審査がされて、一番高いところでも120度と言う、非常に薄い話にまとめてしまった。だから、1月28日に示した資料だけは大変なんだけど、それ以外は全く問題はないので、蒸発・乾固で再処理工場を運転停止するような大それた話にはなりません、というのが彼らの言い方になっているのです。大きく変わったんです。これはすごいごまかしがあって、2019年の4月23日、さっき見せたのが1月28日なので、3カ月の間に、基準が大きく変わって、そんな大きな事故は起きないから大丈夫という話を一生懸命するように変わってしまったというのが、真相です。

規制委員会が日本原燃に方法を伝授する

 実は今、規制委員会のメンバーに東京大学の名誉教授の田中知という人がいるのです。それまでは再処理施設に受け入れるまでの使用済燃料の冷却期間は1年以上、せん断処理までの冷却期間は4年以上、という形で日本原燃は考えていました。しかし、それではルテニウムが大量に排出されるので対策が必要になりました。その時、2015年6月29日に田中知氏が「これから当分再処理していくのは見合わせた方がより現実的ではないかな、と思うんですけどもいかがでしょう」と言いました。そして翌、第73回の審査会では、「現在は15年冷却なのでそれに合わせて再処理するということにすると、放射能、ルテニウムの問題も収まりますよ」ということを話し、まさに、事業者ではなくて、規制委員会の方から方法を伝授したのです。しかも公開の場でです。日本原燃は今まで長々と申請書で、「使用済燃料が出てきた時には4年後に再処理します」と言って来たのに、今の規制委員会の審査では「15年冷却でやるので問題ありません」と変わったんです。トリチウムの放出量が福島の10倍だと言ってきましたが、これも15年冷却にするとトリチウムの影響は少ないです。いいことづくめだと言う風に言うのです。しかし、今ある使用済燃料を処理し終わった後で、新しいものが入ってきたら、また4年でやらなきゃいけない時を考えて、とり合えず15年のものをやってノウハウを蓄積して、次に備えたらどうですかと言っているので、その4年後のものが出た時の対策は今ないんです。これから勉強していきましょうですからね。だからすごく不安です。何も技術がないのにやろうとしているという風にしか私には思えません。

米軍三沢基地とレーダー網

 せっかくですから先ほど三沢方面を通った方もいらっしゃるようですから、米軍三沢基地と言うことでご説明します。これは昔の「象の檻」です。今はもうありません。「象の檻」の機能はソ連の潜水艦とかの電波を取る、波長を取るのがその役割でしたが、今はこちらで全部まかないます。

 それからエシュロンと言うスパイのレーダーがこの中に2つくらい入っているそうで、日本の産業機密情報、個人情報を全て盗っているということです。私がここで学習会をしているのもここに入っているかもしれないし、皆さんのインターネット情報もここでキャッチされているかもしれません。そういうものが入っているところが今あります。

 今、三沢の主力戦闘機、米軍はF16をまだ使っていますが、操縦席の中に核兵器リリースボタンがあって、世界最小の核兵器搭載機がF16の一番の売りなわけで、実戦配備されている飛行機には残っているわけです。そして、今、三沢の自衛隊にF35が配備されました。  

 徐々に増えて行って最終的には42機ぐらいにまで増やしていくそうです。F35の売りは、敵のレーダーに見つからないステルス機能を持っています。レーダーに捕捉されないんだから国境を越えていくんじゃないかと私は思っています。これが航空祭で展示されたものを写したんですが、ここに2つエンジンがあるのですごくうるさいのです。今まで三沢で滑走路の近くに住んでいた人たちも、F35来たからそろそろ集団移転が出来るんじゃないか、新しい家が建つんじゃないかというなんか喜びの声が聞こえてきそうな状況です。ちょっと恥ずかしい話ですが。

 それで再処理工場から30㎞以内に三沢基地があってステルス戦闘機ですから、いつでも国境警備に飛び立てるように準備しています。安倍首相が買った新型巡航ミサイルと言うのは射程距離900キロまで攻撃できるそうなので、国境あたりまで行って北朝鮮に向けてボンと撃っちゃえば、金さんのいるところまで届くんじゃないかと言う怖さを感じます。あと、青森県の役割として、国民保護法のレーダーを様々用意していました。

 米軍車力基地、もともとは自衛隊車力基地があったところにXバンドレーダーを作るために米軍が来ました。米軍三沢基地にはJ-Tagsと、むつの海上自衛隊のところに巨大なレーダー、山の上にレーダーがあります。この3つで北朝鮮から飛んでくるミサイルを、例えばアメリカに撃つ時でも日本は自衛隊イージス艦で撃ち落としますよという構想です。撃ち落とせるかどうか分かりませんが。この後、秋田でイージスアショアの話がありましたが、この話はなくなりました。いずれにしてもこれだけでは足りないということで、実はXバンドレーダーは京都丹後市の方にもあります。それで日本中をカバーしています。

断層問題も大きい

 東洋大学の渡辺満久先生が、六ヶ所の核燃施設の近くの活断層が100キロぐらいになるので、M8くらいの地震が来たら再処理工場は持ちませんよ、それから大間の原発もダメですよ、ということを変動地形学の立場で言っているのですが、採用されていません。大間の市民団体の裁判でも、そのように主張したのですが、とりあえず一審では負けました。この話は、北海道大学の小野有五先生も言っています。大間もダメだし寿都町も断層があってダメなんだという話をこの間学習会でしてくれていました。

十和田湖の噴火の想定も必要

 これ以外に、青森県が想定した津波の被害も想定しています。そして肝心なのが、皆さん十和田湖と言うと観光地で、今頃は紅葉シーズンで人が大変な時期ですが、あそこは実は二重のカルデラ湖で、いつでも爆発する可能性があるということで、2018年1月24日に審査会を開いて、こんな図を出してきました(図)。この図では小川原湖のあたりで爆発時の降灰が100㎝、むつと東通りのあたりで30㎝と見てたので、私はこれを見て、六ヶ所で60㎝くらい来ても当たり前じゃないかと思っていたのですが、日本原燃はこれを見て、その時はいったん層厚36㎝迄耐えられればいいとしたんです。しかしその後、さすがに36㎝じゃダメだったと思ったらしく、とりあえず55㎝、しかも軽石ということで見直しました。しかし私はこの図を見るだけでもかなり60㎝から70㎝は行くんじゃないかと思っているのです。関西の「美浜の会」の方々はこれを見て、「降灰と言うのは5㎝あっても車が走れなくなって大変な時期に、こんなにあったら大変でしょう」と言う話をするのですが、日本原燃は「いや55㎝で大丈夫」と言って規制委員会もこれ通してしまいました。しかし、これが降ったらしばらくは資源が何も他から供給できない状態になり、例えば、医療用非常電源を使ってその油がなくなって、それがためにダメになると言うのは十分あることだなと思っています。

ということで大体核燃サイクルの現状をまとめました。

1万枚のハガキ放流の取り組み

 1万枚のハガキ放流と言うことですが、実は私どもは2002年の8月26日に、六ヶ所村の海岸から3キロ沖合に放流菅があるので、そこのブイを船でぐるっと回って、1万枚のハガキを流して調査をしました。どこまで行くのかなあということで、葉書にクリップをつけてやると海の中を漂っていって、それを拾った人が送ってくれる。それを郵便局でお金を払って回収したということですが、六ヶ所でも109枚上がりました。沢山、泊とかにもあがったそうですが、中身を見て調査ハガキだということが分かったんで、こんなものが泊の海岸に上がったことが分かると困るから、みんなで拾って隠しておくべしという話になってそれらは未だに戻ってこないのですが、その中でも109枚が六ヶ所内で出ました。一番端は苫小牧で1枚出ました。南は、千葉の銚子さらには千倉町ということで出ましたので、ま、ほとんどの太平洋岸に行ったんです。もしかしてハワイから返ってきたら、お礼に行こうかと思いましたが、ハワイからは来なかったんですけど、こういう形で広がるというのが分かりました。

再処理工場からの放流は、東北の復興に冷や水をかけることに

 六ヶ所の再処理工場は、放流菅を通して、高レベル廃液は直接流しませんが、プルトニウムが含まれた溶液とか、そういうものを含めて流します。今、福島で問題になっているのは何かと言うと、六ヶ所再処理工場が出す予定の10分の1が今たまってるトリチウムで、それを今日の新聞でも2年後には海に流しますと言っています。その時は確か30年くらいかけて薄めて流すのですが、六ヶ所ではそれを1年間で原液で流しますから、福島で30年かけて薄めて流すよりは、こっちからいっぱい毎年毎年流れてきて、もう東北の太平洋沿岸一帯ですね。今、岩手、宮城、福島というこの辺、復興で盛り上がっているところに全部冷や水をかけるような形です。もう風評被害からなにから全部じゃないかと言う気がして、そういうことを懸念していかなければならない、そう思っています。

日本の全原発が放出する1年分のトリチウムが、たった1か月で放出される

 2007年9月に確か72トンぐらいの使用済み燃料を再処理した時に、トリチウムが許容基準以下ですけど、5.2×10の14乗が放出されました。これが2年半の試験の一番最高量です。次の図を見ていただきたいのですが、5.2×10の14乗を覚えておいて、これを見て下さい。

 2004年4.2×10の14乗。全原発の計です。1年間かけて4.2×10の14乗しかトリチウムを出していないのに、六ヶ所は1カ月でこれを超えてしまいました。この時2004年なので、原発の数は少なかったんじゃないかと思うかもしれませんが、もう53基、54基です。今55基あると言ってましたから、もうほぼ一杯だったのです。発電量も結構高い。4500万キロワットくらい作っているんですから、全然特別な数字じゃありません。ということは、この数字のほとんど現状の原発全部動かすのと同じくらいですから、それを1か月間で超えるということは、相当六ヶ所再処理工場がトリチウムを放出するわけです。そのことについて「許容基準以下だから大丈夫」というのは向こう側の言うことなので、それを私たちが果たして信用できるのかということですので、これは絶対信用しないでいただきたい。

返還高レベル放射性廃棄物の保管期間切れは間近

 それで高レベル放射性廃棄物に関しては今1310本フランスから既に返ってきました。最初に95年4月26日に返って来たので、私たちへの約束では30年から50年後に搬出すると言うのだから、2045年の4月25日くらいまでには出していただきたいのです。今北海道で調査地、文献調査の名乗りを上げていますが、適地調査に20年かかります。そこから建設に10年かけるから、合わせて30年かかるという説明を去年あたり青森に来て原子力発電環境整備機構(ニューモ)が言ってました。すると、「50年と言う約束を守れないじゃないですか」と言ったら、向こうの人が「努力します」って(笑)4年ぐらい短くするように努力すると嘘ばっかり言ってます。こういう話を前の年に青森でやった時にもそうやって言って、去年八戸でやっても同じですね。今おそらく北海道に行ってしゃべっても同じ話で、「いやあ、あと20年は適地調査にかかりますよ。」「あと30年かけて受け入れ施設を用意するつもりですからご安心ください」みたいにしゃべってると思うのです。本当は青森県の約束を守る気はないんじゃないかと思いますね。

約束を守らせるために県条例の制定を

 私たちは、50年までに搬出するという約束を守るための県条例の制定の運動をしようということで、たいそう長い名前になるのですが、今始めているところです。是非、県外の方もネットで参加できます。条例と言うとハンコが必要だと思うかもしれません。これは子どもでもできるようにしてハンコはいらないようにして、とりあえず県内目標10万筆をめざしていて、たくさんの方から経済的にも署名にもご協力いただいています。

首長選挙での勝利を

 再処理工場を止めるアクションとして考えるのは、首長選挙で勝利することです。今日は、六ヶ所村長選挙の候補者だった遠藤さんもいらっしゃるし、知事選挙の候補者の佐原さんもいらっしゃいます。次、22年村長選挙は2年後です。再処理工場安全協定後7千億円のお金が落ちて、狂喜乱舞の世界の中で果たして選挙が出来るのかという問題があります。それから青森知事選挙が23年です。本当に再処理工場を動かしていいかどうか、最後の知事選挙になるんじゃないかと思いますが、完工が2年3年と延びる可能性もあるので、それほど緊急ではないかもしれませんが、政治的な勝負としてはこういう日程となっています。

YOU TUBEでの配信を考えている

 それから、今日も皆さん、お話聴いてもまだまだよく再処理のことは分からない状態でいると思うので、明日PR館で説明しても、家に帰ってから、あそうか、って分かるかもしれないのですが、ユーチューブの配信ということを今考えています。今、ユーチューブで配信する材料を編集の方にお願いするので撮影していくのですが、1回3分くらいにして、全体で100回で、一週間に一回ずつ更新してアップしていこうと思っています。そうすれば再処理工場の問題も全国の方に拡げられると思うので、基礎の方からずうっと始めていこうかなと今考えています。顔を出さないナレーターの方がこの前見つかったので、私は原稿を書いたり資料を作る方の係をやる。そういうことをやりたいと思っています。

投書箱とか相談所とかのホームページを立ち上げる 

 あと再処理工事の働き手が6000人から8000人へと増えるのです。ただこれもさっき言ったように短期の仕事なので、そんなところに行かないで被ばくしないようにしましょうやと呼びかけたいのです。出来れば投書箱とか相談所とかのホームページを立ち上げて、そこに誰からでも情報が―いやがらせの情報とかもあるかもしれませんが―飛び込んでくる。そうやって日本原燃の抱えている問題を一定程度皆さんと共有できればなあと思っています。私はよくマスコミの人に「日本原燃で働いている人と知り合いいませんか」って言われるのです。「いません」で終わりです。私が知っている人はいるのですが、顔出ししたくないのです。顔を出せば仕事になりません。退職させられます。今、県内のたくさんの人、自分の知り合いが原燃に働きに行ったり何らかの形で知り合ってくると、署名も書けなくなるしアクションも起こせなくなります。以前、中学校の先生が三沢の路上で街宣署名をやっていた時に協力してくれてたんですよ。その後、その方が六ヶ所村に赴任になりまして、三沢で見かけたので、「先生、今この署名やってんだけど書いてくれませんか」と言ったら、「今書けない」って。「名前が載っちゃうと仕事がなくなっちゃうよ」と言うのです。


以上で大体終わります。ありがとうございました。






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